みんなが歓喜したアベタカさんの勝利。
昨日のこの勝利の喜びは、チーム内に留まらず、業界全体を歓喜させた。
会場やSNSで、多方面の人たちに祝福されるアベタカさんの姿は、それはとても喜ばしく幸せな光景だった。
これはいつもアベタカさんの走りを皆んなが評価しているから。
もちろん、それはチームメイトが一番よく知っている。
いつも誰かの勝利を陰で支え続けるアベタカさん。
僕なんてブリッツェンに来た最初の年から、アベタカさんにアシストしてもらっている。
おかげで数々の勝利を収めることができたが、この勝利の裏には必ずアベタカさんがいた。
そしてアベタカさんはいつも、自分のアシストした選手の勝利した背中を見て、後ろで大きく手を挙げるのだ。
たとえポディウムに上がらなくても、みんなアベタカさんの仕事はしっている。
そして他のチームからも、その走りは評価されている。
しかし、紙面や記事でスポットが当たるのは勝者なのがほとんど。
アシストに徹する選手の活躍はなかなか表向きになりにくい。
そんな選手が、突然勝負を任され、そしてそれを達成した。
だから、今回のアベタカさんの勝利には、普段アシストを受けているチームメイト全員が同じように喜んだのだ。
僕もゴール直後に駆け寄り、その勝利を祝福する。
僕はそんな先輩の姿を見て、こんな選手になりたい、と強く思った。
ロードレースに欠かせないアシストという役職に徹し、いざ自分の勝負になったら外さない。
僕がまだ成すことのできていないことだ。
チームメイトにこんなにも素晴らしく、リスペクトできる人が沢山いるのはとても幸せな環境だ。
常に刺激的で、身近に目標にできる人がいる。
僕は最高の環境で走れているみたいだ。
なんだか今回は僕のレースレポートは必要ないくらいだ。
それだけに、カッコよく、素晴らしい勝利だった。
100km以上の距離を逃げ屋として逃げ、レース展開が逃げ勝負になった。
そして最後、強敵相手にスプリントで勝った!
アベタカさんカッコいい!!
もうこれで十分だ。
僕らはメイン集団で、ただ彼を信じて走ることしかできなかった。
そして僕は暑さによる不調に悩まされつつも、奮闘するチームメイトのことを思うと、なんとか踏みとどまることができた。
ロードレースに勝者は一人しかいない。
けれど、その一人の勝利をチーム全員で味わえるのもまた、ロードレースの良さなのだ。
それではまた、とオノデライダーは小さく手をあげる。